脳梗塞

原因と症状

脳の血管がつまって、その先に酸素や栄養が届かなくなり組織が壊死、または壊死に近い状態になることが原因です。

壊死した組織が担っていた機能が失われることで発症するため、症例によりさまざまな症状を示します。片側の麻痺・しびれ感・失明、言語障害、意識障害、失語、失認、失調、めまいなどの症状がみられます。

脳梗塞の分類

血管がつまる原因によって脳血栓症・脳塞栓症・一過性脳虚血発作の3種類に分類されます。

脳血栓症
脳の血管の動脈硬化が原因
脳塞栓症
脳血管の病変ではなく、より上流(最も多いのは心臓)から流れてきた血栓(栓子)が詰まることで起こる脳虚血
一過性脳虚血発作
 

また臨床分類としてアテローム血栓性脳梗塞・心原性脳塞栓・ラクナ梗塞・その他の脳梗塞の4種類に分類されます。

アテローム血栓性脳梗塞
動脈硬化によって血管壁に沈着しアテローム(粥腫:どろどろした塊)が、血管を狭くし十分な血流を保てなくなったり、 血管壁からはがれ落ちて末梢につまったりしたもの。喫煙、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧などが危険因子
心原性脳塞栓
心臓の疾患(弁膜症、心内膜炎、心臓腫瘍、心筋症、NVAF など)が原因のもの
ラクナ梗塞
本来、直径1.5cm以下の小さな梗塞で高血圧性血管変化(lipohyalinosis)が主原因であるもの
その他の脳梗塞
血管炎(自己免疫、感染性など)、凝固因子異常、外傷性、静脈血栓性、医原性など

脳梗塞臨床病型の鑑別診断

脳梗塞臨床病型の鑑別診断
病型 アテローム血栓性脳梗塞 心原性脳塞栓症 ラクナ梗塞
頻度 10~20% 20~30% 50~60%
発症様式 緩徐 段階的増悪あり
動脈原性塞栓の場合は、突発
日中活動時 突発完成 睡眠中・朝覚醒時 比較的緩徐あるいは突発
意識障害 軽度(何となく清明でない) 高度であることが多い ない
大脳皮質徴候 あることあり あること多い ない
共同偏視 少ない 多い ない
既往症・
基礎疾患
高血圧、糖尿病、多血症 心疾患(心房細動:特に、NVAF、弁膜症、心筋梗塞、心内膜炎) 高血圧を高率に合併
CT所見
(病変)
境界域に多く、比較的まだら状、塞栓性(動脈原性)の場合は、皮質を含む 動脈の支配領域にほぼ一致し、広いことが多い 皮質下で15mm以下
出血性梗塞 ごくまれ(<5%) 多い(40-50%) ない
脳浮腫 軽度から中等度 高度のこと多い ない
脳血管撮影 脳主幹動脈に動脈硬化性閉塞性病変 初期にはカニの爪様陰影あるが、再開通現象高頻度 主幹動脈に所見乏しい
発症機序 血栓性、塞栓性、血行力学性 塞栓性 血栓性、塞栓性、血行力学性
心・血管病変 大血管アテローム硬化 心臓 穿通動脈
慢性期
再発予防
抗血小板薬
危険因子管理
抗凝血薬(+抗血小板薬)
基礎疾患管理
危険因子管理

治療・手術

症状が現れたときの対処の速さや的確さで、その後の経過の良し悪しが決まってしまいます。脳梗塞が疑われる症状が現れたら躊躇せず直ちに救急車を呼んで、適切な治療を開始してください。

症例

アテローマ血栓症による中大脳動脈閉塞に対する急性期バイパス術
アテローマ血栓症による中大脳動脈閉塞症は、iv t-PAや血管内治療にてもその効果に限界のある症例があります。 また、進行卒中を呈した症例においては、ゴールデンタイムを過ぎたためにこれらの治療が適応外となります。 これらの症例の中には、急性期に梗塞巣が完成あるいは拡大し、転帰不良となる症例が存在します。

これらの転帰不良群の予後改善をめざし、急性期バイパス術を行いました。 治療が奏効した2例を呈示します。

症例
アテローマ血栓症による中大脳動脈閉塞に対する急性期バイパス術

*注 ファイル内には頭蓋内部の画像が含まれています。

予防

夏の脳梗塞予防には上手な水分補給を

従来、脳卒中は、冬に多い病気として知られていましたが、最近の研究では、脳梗塞に限ると夏のほうが多いことがわかっています。 その主な原因は、脱水です。夏は汗をかくため、気づかないうちに体内の水分が不足します。すると血液の流れが悪化し、血管が詰まりやすくなるのです。

予防には水分補給が大切で、汗をかいていなくても、早め早めに、そしてこまめに水分をとることです。

夏には汗をかかなくても、脱水症状を起こすことがあります。それは、エアコンとアルコールによるものです。エアコンの効いた室内は、乾燥していて、汗をかかなくても、常に体から少しずつ水分が奪われています。高齢になるほど、のどの渇きに気づきにくくなるので、定期的に水分をとることが大切です。また、アルコールを飲むと、利尿作用があるため、飲んだ以上に尿となって水分が排出されてしまいます。飲酒の際は、飲みすぎに気をつけ、最後に水を1~2杯飲んでおく習慣をつけましょう。

もうひとつ大切なことは、睡眠の前後に水分補給をすることです。普段でも私たちは、眠っている間にコップ1杯程度(200cc)の汗をかきます。熱帯夜ともなると、それ以上の汗をかいています。また眠っているときは、血圧が低下するため、血液の流れが遅くなり、血栓ができやすい状態になります。さらに起床する前後からは、活動に備えてアドレナリンが分泌され、血液が固まりやすくなります。

これらの条件が重なり、夏の脳梗塞は睡眠中から起床後の時間帯にかけて起こりやすくなります。予防のために、寝る前と朝起きたときに水を1杯、夜間にトイレに起きたらその際にも1杯というように水分を補給するのがいいでしょう。

                                                       脳神経外科 溝渕 光