高い技術との出会い
私が福島医師と初めてお会いしたのは2004年、福島医師のいるデューク大学に伺ったときです。福島医師は、渡米されてすでに13年経ち、頭蓋底外科手術(頭蓋骨を削り、脳を包んでいる硬膜の外からアプローチする方法)を多く手がけ、難しい手術をどんどん行っておられました。
福島医師は”神の手”と呼ばれるほど卓越した手術テクニックを持っています。 しかし、手術成績が良いのは、手術技術が高いからだけではなく、頭蓋内の非常に細かな構造まで熟知しているからなのです。 渡米後、たくさんの研究をされ、革命的な手術アプローチを編み出しました。 また、多くの先端的な医療機器・設備を開発しました。 鍵穴手術は、技術・知識・道具が揃って初めてできるものです。
日々研鑽
福島医師のご厚意により毎日手術を見学させていただき、その見事な手術に目を見張りました。研修会で解剖実習を行い、充実した時期を過ごすことができました。
これ以降、福島医師と懇意にさせていただき、難しい症例は相談し、手術を指導していただけるようになりました。2007年より一緒に手術をさせていただき、頭蓋底外科手術をはじめこれまで42例の手術を行ってきました。福島医師の美しい手術を一番近いところから生で見られるのは、一番勉強になります。また手取り足取り教えていただけるので、スタッフのレベルアップにつながっています。
すべては患者さんのために
福島医師は常に、患者さんの負担が少ない手術を行うことを考えています。手術が終わると、「もっと小さい開頭範囲でできたのではないかと振り返りなさい」と指導されます。また、「私はまだ手術が上手になっているよ」と言われます。常によりよい手術を考え、術後には手術アプローチや改善点、医療機器を改良するアイデアが湧いてくるようです。
当院来院時には、手術の合間に診察希望の患者さんを診察されます。時間がない中でも話をよく聞き、一人一人懇切丁寧に診察し、最後には必ず励ましの言葉を掛けられ、握手をされます。前医で「手術ができない、難治性である」と言われていた方が、 「大丈夫。私が手術します」と言われたら、ぽろぽろと涙を流して喜ばれます。
患者さんの絶対的な信頼を得るには、これまで切磋琢磨してきた技術、知識、仁徳が必要です。中には難治性で手術ができない方もいらっしゃいますが、丁寧にお話をされます。「どんな状況の患者さんでも前向きになれるように治療の提言をし、励ましの言葉を掛けることが我々の使命です」と言われたことが胸に響きました。
後進育成も重要な使命
福島医師は後進の指導にも熱心で、ご自身の技術、知識を後進に伝えるため、日本・北米・ヨーロッパなど世界中を駆け巡って手術・講演を行ってきました。以前、アメリカの研修会に参加していたとき、コスタリカから来た脳外科医が言っていました。「福島先生がコスタリカの病院まで教えに来てくれ、私達の間の抜けた質問にもいやな顔一つせず、懇切丁寧に答えてくれた。我々の医療レベルに合わせて教えてくれた」と。
頭蓋底外科手術は、頭蓋底の細かな構造に精通していないとできません。福島医師は、手術解剖を学ぶ研修会・講習会をアメリカで定期的に開催しており、世界中から脳外科医が参加しています。前回は日本をはじめ13か国からの参加がありました。私もこれまで定期的に参加し、各国の脳外科医と共に学び、切磋琢磨しています。
“神の手”の素顔
先生はいつも元気で、朗らかで、前向きです。弱音を吐いているところを見たことがありません。先生がおいでになると周りが明るくなり、活力に満ちた雰囲気になります。私たちにいつも元気を与え、前向きにさせてくれました。
福島医師(右)と溝渕医師(左):2015年2月 愛宕病院手術室にて
信頼される脳神経センターに
福島医師にご指導いただいた経験をもとに、今後も皆様の信頼に足る脳神経センターとなるよう努力してまいります。
脳神経外科 溝渕 光
脳神経外科は他科の医療とかなり違います。設備とお金が非常にかかること、長年のたくさんの経験がないときっちりとした医療ができないのです。
愛宕病院脳神経センターは、私の弟子の溝渕医師をはじめ脳神経外科専門医が力を合わせ、福島とともに最高の治療を目指し、日夜奮闘しております。
私も2~3カ月ごとに高知に寄らせていただき一生懸命がんばっています。この先、さらに飛躍の年とし、中四国一の脳神経センターにします。
今後とも皆様のご支援とあたたかいサポートをよろしくお願い申し上げます。
福島 孝徳