頭部外傷とは
頭部外傷後の注意
頭を打った時には、脳にいろいろな変化が起こります。とくに頭蓋骨(頭の骨)の内側に出血が起こると生命に危険をおよぼすことがあるので注意が必要です。頭蓋内出血(頭の中の出血)の症状は、頭を打った後すぐ起こることも、数時間、1~2日、ときには数日たってから起こることもあります。 ですから外傷直後に何も症状がなくても、十分注意しなければなりません。
頭部外傷後は、次にあげるような症状があれば、至急脳神経外科のある病院にご相談ください。
慢性頭痛
他の病気と関係なく、毎日あるいは1週間おきなど、周期的に繰り返して起こる頭痛です。日本人の15歳以上を対象にした調査では、緊張型頭痛が圧倒的に多く22%で慢性頭痛の約半数を占め、次いで片頭痛が8.4%でした。つまり840万人が片頭痛と推定されています。命にかかわることはありませんが、日常生活に支障を来すこともあります。
- 頭痛がだんだんと強くなる
- 嘔気、嘔吐を繰り返す
- 意識の状態に変化がある:ぼんやりしてくる、放っておくとすぐ眠ってしまう
- 視力(物を見る力)が弱くなったり、物が二重に見えたりする
- 口がもつれてきたり、手足が動きにくくなったり、しびれたりする
- けいれん(ひきつけ)を起こす
- 熱が高くなる
また、頭部外傷後は少なくとも24時間は、次のことに留意してください。
- できるだけ静かにしていること
- 振動するものに乗らないこと、子供の場合は抱き上げて振り回さないこと
- 入浴は控えること
- 万一嘔吐したときのことを考えて、食事は控えめにし、消化のよいものを摂取すること
- アルコール類やチョコレートなどの刺激の強い食べ物は控えること
一般に数日間、異常がなければ、頭部外傷に関する後遺症の心配はありません。
ただし、比較的お年寄りに多いのですが、「慢性硬膜下血腫」といって、外傷後数週してから少しずつ頭の中に血が溜まることが稀にあります。 この頃に、上にあげた症状が出てくれば病院で診察を受けてください。
頭部外傷時にCT検査が不要な場合は?
小児の頭部外傷時に頭部CT検査が不要なケース
最近の研究で、頭部外傷の低リスク小児を予測する新尺度が発表されました。研究では18歳以下の小児42000例を検討し、臨床上問題のない頭部外傷を2歳未満の小児では100%予測し、2歳以上の小児では99.95%正しく予測しました。
2歳未満の小児で臨床上重大な頭部外傷が見られない例の特徴
- 精神状態が正常
- 前頭部以外の頭皮に血腫(腫脹)がない
- 意識消失はないかあっても5秒未満
- 傷害の機序が重度でない
- 触診で髄外骨折を触知しない
- 保護者が子の行動は正常と見ている
2歳以上の小児における予測基準
- 精神状態が正常
- 意識消失がない
- 嘔吐がない
- 損傷の機序が重度ではない
- 頭蓋底骨折の徴候はない
- 重度の頭痛がない
頭部打撲の際に「自分の子にCT検査は必要なのか」判断する際に参考にしてください。もちろん、不安がある場合には、専門医を受診してください。
脳神経外科 溝渕 光